ビジネスにおいて、消費者ニーズを掴むことは重要です。しかし、消費者ニーズには2種類あることを知らない人が多い。
1つは「顧客ニーズ」です。もう一つが「見込み客ニーズ」です。ややもすると「消費者ニーズ=顧客ニーズ」と思われがちですが、実は見込み客ニーズの方が重要です。
既存客は基本的にあなたの提供する商品(物品、サービス等)に満足しているから顧客になっています。この顧客にニーズを尋ねると、次のことしか言いません。
「もっと安く」
「もっと便利に」
「もっと…」
これです。「もっと」の連発になります。
人は(特に常連客は)値下げをすれば儀礼的に感謝するものです。また、値上げをすると儀礼的に苦情を言います。その常連客に媚びて?価格的なサービスを続けていると、確実に経営を圧迫します。
もちろん、常連客は大切です。居酒屋の大将が常連客に対して、たまに「板わさ」をサービスするのはいいでしょう。しかし、それが日常化すると弊害が大きくなりすぎます。
第一に、前述したように利益を圧迫します。常連客を喜ばすために倒産したのでは本末転倒です。もう一つ、大きな弊害があります。それは…新規顧客がコミュニティーに入り辛くなることです。居酒屋の例で言うと、常連客だけに板わさを振舞う大将を、一見客はどう思うでしょう。
「ああ、ここは私のための店ではない。」
そう感じているはずです。
これでは常連客だけのコミュニティーが固まってしまい、新規顧客を獲得することは難しくなります。ビジネスは常に新規顧客の開拓が必要です。新規顧客を作れないビジネスは早晩、衰退します。
「顧客ニーズ」に過度に対応することは避けるべきです。常連客への「えこひいき」は別の形でしましょう。
また、「もっと」のニーズからは新しい発想を得ることができません。まだ顧客になっていない人のニーズを掴むことで、初めて新しいヒントを得ることができます。これが、ビジネスの発展を生み出します。
「あの人は何故、当社の顧客になっていないのだろう?」
その発想が思わぬヒントをもたらします。
注意しなければいけないことは、「全ての人に顧客になってもらおう」とは決して思わないことです。あくまでも見込み客、つまり、あなたのビジネスが有効であると思われる人にセグメントをすることです。
全ての人を顧客にしようと考えることはテーマが大きすぎます。例えていうと、「世界平和のために何が出来るか」を問うようなものです。私なら…「お祈りします」としか答えられません。
「私のビジネスはすべての人に有益だ」と考えるのは傲慢です。「私の商品を買って喜んでくれる人」だけを対象とするビジネスに徹しましょう。京都の「一見さん、お断り」は店の傲慢さの象徴のように言われますが、もともと謙虚な姿勢から生まれたものです。京都は内陸という地勢上、常に良い食材が入手できるわけではありません。そんな時、常連さんならば謝って理解してもらうことも出来ますが、初めての客、それも期待して来てくれた客に事情を説明して理解してもらうことは難しい。「一見さん、お断り」は、そんな発想から始まりました。
そう、あなたの商品を買って喜ぶ人だけを顧客にしていけば、常にWIN−WINの関係を築くことができます。セールスに関するストレスもなくなります。また、そんな顧客は「値下げ」を要求することもありません。
私(森)がフレンドシップマーケティングをおススメしているのも、上記の理由が大きい。せっかく大志を持って起業したのに、ストレスを抱えたままビジネスを続けるのでは意味がありません。(もちろん、経営者として別の苦労があることは重々承知しています。それを私は「経営者の醍醐味」と表現しています。)
既存客のニーズ(もっと安く、もっと便利に)だけを傾聴していると、(表現は悪いですが)奴隷ビジネスになってしまいます。「安くしますから買ってください。」こんなセリフを好んで使う人はいないですよね。「買ってくれてありがとう」「売ってくれてありがとう」と、互いに感謝し合える関係を顧客との間で築きたいものです。それがWIN−WINの関係です。
世の中は2極化へと進んでいるようです。それを「勝ち組」「負け組み」と表現する人もいます。もし、トヨタが「勝ち組」ならば、我々中小企業は全て負け組みでしょう。30歳で200億円の個人資産を作ったホリエモンが勝ち組の象徴ならば、我々どころかトヨタの社長も「負け組み」かもしれません。どちらにせよ、我々は「勝ち組」にはなれそうもありません。
しかし…
私は「勝ち組」にはなれなくても「幸組(さちぐみ)」にはなれそうですし、むしろ、そちらを目指したい。そのためには好きな人を相手にしてビジネスし、「ありがとう」の飛び交う毎日を過ごしたい。経政会の活動は「勝ち組」につながるものではないのですが、「幸組」の道には続いています。
私は「勝ち組」の対極にあって社会を綱引きする勢力は「幸組」だと確信しています。
消費者ニーズは、それが「顧客ニーズ」でも「見込み客ニーズ」でも…会社と客が共に幸せになる目的をはずして考えることは不可能だと思っています。
さあ、あなたの商品を購入して幸せになる人は誰ですか。その人は何を付加すれば顧客になりますか。あなたも客も、そして従業員も幸せになるために「消費者ニーズ」を掴んでください。 |